Snapmaker2 エンクロージャーに温風乾燥機能を追加する


プチプチ音が聞こえてきた

3Dプリンタで印刷している最中にノズルの先端からプチプチと気泡が弾けるような音が聞こえてきた。

一般的にこの現象はフィラメントに含まれる水分がノズル内で水蒸気に変化してノズルから噴出している音と言われていて、解決方法は乾燥したフィラメントを使う以外にはないとされている。(ノズル温度等の調節では解決しない)

フィラメントが湿気ると音が聞こえるだけではなく、プチ音がなった個所は2~10mmほど印刷されず空洞になってしまったり、太さが安定しなくなったり、キレが悪く糸を引くようになったりなど、印刷品質にまつわる様々なトラブルが起きるようになる。良いことは一つもない。

3Dプリンタは24時間換気が動作している鉄筋コンクリート造オフィスビルの上階にあり、一般家庭ほど湿気があるわけではない。手元の安物温湿度計では27.8℃44%となっている。フィラメントの保管も同じ部屋で行っているが、シール付きのビニール袋にシリカゲルを添えてパッキングした上で購入時の段ボール箱に収めており、この程度では湿気りの問題は起きないだろうと思っていた。

だがどうやらネット上の先輩たちによれば、乾燥機に入れない限りシリカゲルと一緒にパウチした程度では湿気りを遅らせる程度の効果しか期待できないとのことで、また、袋から出して室内に置いたフィラメントは大体3日程で吸湿してしまうとのこと。よって頻繁に(もしくは常時)乾燥させるアクションが必要らしい。(新品フィラメントを開封後に毎日重量を計ってみると3日目ぐらいまで増加して落ち着いたとのこと。だが巻線の内側まで浸透するのはもっとかかるのでは?とは思う)

フィラメントドライヤー購入か、自己流か

世間の達人たちはフィラメントドライヤーなる装置を使ってフィラメントを使用前に乾燥させ、使用後はタッパーのような厚みのある気密ケースに入れて保管するそうだ。なるほど気合が入っている。フィラメントドライヤーは市販品もあるし、フードドライヤーなる装置を改造して自作している人もいる。自分も最初はフィラメントドライヤーを購入することを検討していたが、何かもっと面白い方法はないかと思ったので自己流を考えてみることにした。

まずはヒーターの入手

手ごろな性能の温風ヒーターを入手したいと思い、色々探していたところ、以下の商品を見つけた。

12Vで150Wというのがピンとこないが、とりあえずシガーソケット対応ということで、実際のW数は実測してみれば良いかと思い注文。2日後に到着した。

動作確認がてら安定化電源から12Vを出して繋いでみるとゆるい温風がそよそよと出てきた。とても車内暖房に使える暖かさとは思えないが、フィラメント乾燥のヒーターとして見るならば適温な気もする。ちなみに、電流は4.3Aで、消費電力は51Wのようだ。商品説明では150Wとなっていたが1/3の能力である。 注意喚起としてレビューにも書いておいた(笑)

レビューにも書けない余談

電圧を与えながら電流(消費電力)の推移を見ていて気が付いたのだが、PTCヒーターの特徴である高温になると高抵抗になって消費電流が下がるという動作をしている様子がない。9V~15V程度まで電圧を変えながら消費電流を観察しても単純に比例しているようにしか見えない。PTC素子には常にブロアの風があたるようになっているため、ブロアの冷却力が強すぎてキュリー温度に達していないのか。。。(いや、風はそよそよという感じで全然冷却能力なさそうだけど。。。)

仕方なく分解して確認してみる。

回路は簡単で、入ってきた12VをそのままブロアとPTCヒーターに並列に与えている。ブロアは定格24V品が使われており、半分の電圧で駆動していたようだ。PTCヒーターには定格などの表記は見当たらないが、ブロアと同じ24Vをかけても壊れるようには思えない。試しに恐る恐る24Vまで電圧を上げてみたが、風量も風の温度もヘアドライヤーに近い出力となった。吹き出し口に手をかざすと火傷しそうになる。電流は8.1Aまで上がり、消費電力は194.4Wを記録した。

PTCヒーターをラジオペンチでつまんでブロアの風に当たらない位置にしたらちゃんとキュリー温度を超えるようで、電流が下がる現象も確認できた。キュリー温度が何℃かは、ちょうど放射温度計の電池が切れており測れていない。が、300℃は軽く超えていそうだなという印象。

商品説明の150Wというのは24V車で使用したときのことを言っているのかもしれない。だが、商品説明の動作電圧は12Vと明記されているし、24V駆動時の消費電流8.1Aはシガーソケットの10Aヒューズをギリギリ下回るものの150Wを遥かに超える194Wだし、いろいろ辻褄があっていない。 12V, 4.3A, 51W のそよ風を許容するか、24V, 8.1A, 194.4W のリスクを許容するか、まさに自己判断・自己責任の世界だ。

とりあえずうまくいっている

購入したブロアを Snapmaker2 A250 のエンクロージャー内に設置し、安定化電源から12Vを供給してみることにした。このヒーターの消費電力50Wでは1時間あたり0.05Whを消費している訳で、電気代を1kWhあたり25円とすると「1時間あたり1.25円程度」の電気代がかかる計算だ。月額930円で、これはアイドル状態のデスクトップPCの半分程度とみてよい。

Snapmaker2 A250用 エンクロージャー

設置から50時間程度放置したあとのエンクロージャー内の温度は45℃、湿度は10%程度となった。その後扉を開けて出力物の取り出しや軽い調整、出力の実施など、通常の運用を行ってみたが、温度は42℃、湿度は20%ぐらいで安定している。エンクロージャーの外側では27℃45%程度なので、内部は乾燥していると言えるのではないだろうか。

吸湿してしまい使いどころが無くなってしまっていたフィラメントをエンクロージャー内の空きスペースに置いて1週間ほど乾かしてみたところ、見事に出力が安定するようになった。頻繁にフィラメントを交換する場合はエンクロージャーの外で乾燥させる手段が欲しいところだが、自分の使い方では途中での交換や保管はあまりなく、一度付けたら付けっぱなしという運用なので今の状態は非常に気に入っている。

現状、ヒーターを動作させるために安定化電源が1台拘束されている状況なのでこれは近いうちに解消したい。


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