Snapmaker2の騒音問題
Snapmaker2を入手した人たちは騒音に悩まされている人が多いように見える。特に初期ロットを入手した人たちのレビュー等を見ているとエクストルーダーおよびステージを駆動するリニアモーターのうなり音が「家のどこに居ても聞こえる」ほど煩いようだ。
自分はレーザーモジュールを使う予定があるためエンクロージャーも併せて購入しており、むき出しで使うやかましさの経験はない。さらに幸いにして自分は改善されたロットを入手できたようで、エンクロージャーを開いていても印刷中の駆動音は紙に印刷するインクジェットプリンタと同等か、それよりも少しだけ煩い程度で音色もまろやかな感じであり、正直、紙のプリンターの乾いた高音の方が気になるくらいだ。もちろんエンクロージャーのドアを閉めれば(オフィス等の一般的な騒音環境において)2m離れた席でプリンタが動作していることに気がつかないことがあるほど静かになる。
発売元情報によればリニアモーターはドライバーがさらに改善されているようで、今から買う人がリニアモーターのうなり音に悩まされることは減っているのではないかと思う。
さて、ここまではリニアモーターの音について述べてきたが、本体の駆動音と共に話題となっているのが電源ユニットファンの排気音(風切り音)だ。(電源ユニットの排気音も最新版では静音化しているようす。羨ましい限りだ。)
電源ユニットの排気音問題
Snapmaker2の電源ユニットは100VのACを24VのDCに変換している。スイッチング電源とグラデーション点滅が知性を想像させるLED照明基板、突入電流に対処するのであろう電解コンデンサが数個入っているだけだ。とくにCPUのような制御装置は入っておらず、LEDの演出を見て「何らかのCPUが入っているのかなぁー」と想像していた自分に苦笑いしか出ない。しかしながら容量は24V・13.4Aで320Wとなかなかの出力が可能であり、これをファンレスで駆動するのは困難であろうということは容易に想像がつく。
電源ユニットには2つのファンが搭載されており、一つは今回のターゲットである背面ファンであるが、もう一つは本体内部のスイッチング電源モジュールに取り付けられている。それぞれを取り出して単体で動作音を聞いてみたが、内側のファンはさして大きな音は出しておらず、騒音に悩む人であっても対処は背面ファン(以下写真)のみで良さそうだ。
ちなみに内側のファンを見たい(交換したい)人は以下:
Snapmaker2 電源ユニットファンの故障
ネット上で背面ファン交換をしている人はこの「24V駆動35mm角ファン」を「12V駆動40mm角ファン」に交換してる人がほとんどで、寸法・電圧違いのファンを取り付けるためにカスタムなバックプレート(上の写真で指でつまんでいる板)を3Dプリンタで印刷し、24V⇒12VのDC-DCコンバーターを何とかケース内に押し込む改造をしている。なかなか骨の折れる作業だ。内側のファンは12V駆動なので配線を分岐したらDC-DCを省略できたりしないのかなと思ったりはした。
対処方針を考える
12V 40mm角ファンをつけている人たちは、おそらく風量を下げずに騒音を下げようとした結果(または35mm角ファンの入手性が悪い事)からそのような手法になっていると想像したが、自分はこのような作業には抵抗(めんどくささ)を感じたので、まずは元から付いているファンを単純に静音タイプに交換できないかと考えることにした。風量は当然下がると考えられるが、内側のファンがしっかりしていればケースファンについては多少風量を下げても問題ないと考えたからだ。
データシートによると、オリジナルのファンは以下のような仕様のようだ。
MODEL | XYJ24B3510H |
サイズ | 35x35x10 mm |
電圧 | 24 V |
回転数 | 13500 RPM |
流量 | 7.01 CFM |
静圧 | 9.02 mmH2O(水柱ミリメートル)⇒ 88.6 Pa |
騒音 | 35.7 dBA |
問題発生
上記スペックを気にしつつ、騒音値が低いものがないか探してみたが、スペックはおろか型番すらちゃんと書かれていない販売サイトしか見つからない。さらに寸法は3510と入れれば35mm角10mm厚のものがいくつか出てくるが、5Vや12V駆動のものばかりで24V駆動のものが全く見つからない。2時間以上さまざまなサイトを彷徨い、完全に疲れ果ててヤケクソになった結果、以下を注文してみることにした。今のファンは故障している訳ではないから、購入したファンがダメならば交換をあきらめれば良いだけだ。(ヤケクソ)
この商品は型番すら不明で、商品説明の欄に書かれたサイズ:3510と電圧:24V回転数:6000RPM、そしてノイズ:22dBAという説明のみで注文。風量は不明で回転数がオリジナルの半分程度しかないため期待できないが、もともと静音化が目的なので良しとして注文した。
そして注文の9日後に届いたのだが以下の写真のものだ。さすがAliExpress。写真と異なるラベルのファンが送られてきた。型番らしきものが書かれているので調べてみたが、NCHAOPUというメーカーは存在するらしきものの、ACP3510-24Sという型番の商品は全く見つけられなかった。 ノンブランド品に偽造ラベルを貼っただけのものかもしれないし、廃棄機材から外した中古品かもしれない。
困った。
確認しつつ強行
注文時からヤケクソであったからにはここで正気に戻るわけにもいかず。とりあえず手元の安定化電源から24Vをかけてみたがファンはちゃんと回転した。電圧が高いからか風圧(静圧)はしっかりとしたものを感じ、風量も悪くないように思える。(注:手元に風量や静圧の測定器は無いので感覚的比較論の話である)
異音・異臭もせず、電流・発熱も問題なさそうであったので試しに交換してみることにした。もともと付いていた電線が長かったので加工して短く仕上げた。
交換は無事完了した。電源ユニット裏の六角穴付きサラネジをとりあえず全部外せばユニットは簡単にスライドアウトしてくるし、順番や注意点も特にない。コネクタを作るときに極性を間違えないようにするぐらいしか気を使う場所はなかったように思う。交換前後の外観もまったく見栄えが変わらないので写真は省略する。
結果
騒音の話なので写真などは無いが、結果としては静音化に成功した。
排気口に手をかざすとしっかり風を感じるが音はとても静かになった。無音というわけにはいかないが、(キッチンのではない)室内換気扇の音には完全に紛れるレベルで、窓を開けたならば外から入ってくる風や車の騒音の方がうるさいと言えるし、空気清浄機の弱風などど良い勝負をしているレベルと評価できる。
3Dプリンタを動作させても本体/排気は熱くなったりせず、内部にも熱い空気の滞留は無いように感じるので、このまま継続使用してみる。
もし問題が発生したらここに追記する。
本当はここで入手できるこの型番のファンが良いと提示できれば良かったが、自分自身が型番不明で注文し、型番不詳のファンを受け取って組み立ててしまっている手前、同じことをして成功する保証は全くない。少なくともこのような場合は組み込む前に単体での動作確認は必須と考える。
- 質感の確認(視認できる不具合/中古品)
- 導通の確認(断線/ショート)
- 通電の確認(内部故障/そもそも良品か)
- 音の確認(動作音/故障音)
- 電流の確認(回路故障)
- 発熱の確認(回路故障)
回転数や風量、静圧などが測定できる設備があれば確認したいところであるが、そのような設備がある場所は希少であると思う。
私と同じガチャにチャレンジしてみたい方は以下から注文できる。
もしくはこちら: